外出先のスマホから、デスクの重いマシンで動いているClaude Codeを操作したい。あるいは、WindowsのセッションをMacに引き継ぎたい——2026年3月、こうした要望に応える3つの機能が出揃った。ただし「どれを使えばいいのか」が意外とわかりにくい。

結論を先に言う。開発者はRemote Control、非開発者はDispatch、環境を持たない人はWeb。この3つは補完関係にあり、競合ではない。

3機能の決定的な違い

Remote Control、Dispatch、Claude Code on the Webは名前こそ似ているが、ターゲットも設計思想もまったく異なる。

Remote Control はCLI(ターミナル)のセッションをリモートから覗き窓のように操作する機能だ。claude remote-control を叩くと、Anthropic APIにアウトバウンドHTTPSで登録される。スマホや別PCのブラウザからは、そのセッションに「窓」として接続するだけ。ソースコード、環境変数、MCP設定はローカルに留まり、クラウドには送信されない。ポーリング方式なのでインバウンドポートは一切開かない——つまり、情シスにファイアウォール変更を頼む必要がない。

Dispatch はClaude Cowork(デスクトップアプリ)向けの非同期タスク指示機能だ。スマホからタスクを送り、デスクトップで実行し、結果を後で確認する。リアルタイム操作ではなく「指示を出して放置」するスタイル。非技術者が「あのレポート分析しておいて」と投げて、帰宅後に結果を見る——という使い方を想定している。

Claude Code on the Web はそもそもローカルマシンが不要だ。Anthropicのクラウド上でClaude Codeが実行され、ブラウザからアクセスする。GitHubリポジトリのフレッシュクローンで動くため、ローカル固有の設定(MCP、カスタムツール)は使えないが、どこからでも同じ環境でコーディングできる。

セッションの「呪縛」を理解する

3機能を使いこなすうえで最も重要な制約がある。セッションはプロセスに紐づく、ということだ。

Remote Controlのセッションは、ローカルで走っているClaude Codeのプロセスがある限り生きている。PCがスリープしても復帰時に自動再接続するが、ネットワークが10分以上切断されるか、ターミナルを閉じればセッションは死ぬ。スマホだけで操作を続けることはできない。

これが何を意味するかというと、「WindowsのRemote Controlセッションを、Macでローカルテイクオーバーする」ことは現時点ではできない。真のセッションマイグレーション——プロセス間・マシン間の移動——は、セッション状態のシリアライズという大きなアーキテクチャ変更が必要で、GitHub上でもIssueが複数立っているが未実装だ。

クロスマシン運用の現実解

ではWindows → Macの作業引き継ぎはどうするのか。現時点で最も現実的なのは「Web セッション経由の擬似マイグレーション」だ。

  1. Windowsで作業し、変更をgit commit & push
  2. claude --remote "続きのタスク指示" でクラウドセッションを起動
  3. Macで claude --teleport でクラウドセッションをローカルに取り込み

会話コンテキストは維持されるが、元のローカルセッションとは別物になる。Windows上のMCP設定やローカルツール設定は引き継がれない。完璧ではないが、今できる中では最善だ。

今後の注目Issue

GitHub上で最も実用的なのは #30447(headless remote-control) だと個人的に思っている。TTY不要のデーモンモードが実現すれば、サーバー上でClaude Codeを常時稼働させ、任意のデバイスから接続する運用が可能になる。Mac miniをリモート開発サーバー化する——という構想が現実味を帯びてくる。

マネージャーとしてまず押さえるべきは、「Remote ControlとDispatchは補完関係」ということ。開発者と非開発者それぞれに適切な窓口を用意すれば、チーム全員がリモートからAIエージェントを使える環境が整う。